その嘔吐・下痢、ノロウイルスかも?消化器疾患との関係を解説
2026年1月6日 10時00分 まきこ胃と大腸の消化器・内視鏡クリニック
■ノロウイルスと消化器疾患の関係
冬になるとしばしば耳にする感染症のひとつが「ノロウイルス」です。
特に11月頃から流行が始まり、気温が下 がるにつれて感染者が増えていく傾向があります。
感染力が非常に強いことが特徴で、家族内や職場、学校な ど、人が集まる場所では一気に広がりやすい感染症でもあります。
ノロウイルスは発症すると強い吐き気や嘔 吐、下痢を引き起こし、胃腸に大きな負担をかける感染症です。普段から胃腸が弱い方や、消化器疾患を抱え ている方にとっては、症状が長引いたり重症化したりするリスクがあるため、早い段階で治療を行うことが重要 です。
■ノロウイルスとはどのようなウイルスか
ノロウイルスは、わずかなウイルス量でも感染を引き起こす非常に強力な病原体といわれています。
感染経路 として最も多いのは「経口感染」で、汚染された手指や食べ物、水、調理器具などを介して体内に侵入すること が知られています。
また、嘔吐物が乾燥して空気中に舞い、それを吸い込むことで感染することもあるとも考え られています。体内に入ったノロウイルスは小腸の上皮細胞に感染し、腸の粘膜を刺激することで急性胃腸炎 を引き起こします。潜伏期間は1〜2日ほどで、突然の吐き気や嘔吐などの症状が生じる病気です。
■ノロウイルスが引き起こす胃腸の症状
ノロウイルス感染で現れる症状の中心は「急性胃腸炎」です。
特に以下のような症状を引き起こします。 ・激しい吐き気と嘔吐 ・水様性の下痢 ・腹痛や腹部の張り ・発熱(微熱程度のこともあり) 最も特徴的なのは、突然の嘔吐となります。ノロウイルスは腸の粘膜を強く刺激するため、腸の蠕動運動が乱 れ、内容物を一気に排出しようとする作用が強まります。
これが嘔吐や下痢として現れます。嘔吐や下痢が生じ ることで、脱水症状を起こしやすく、身体がふらつく、口が渇く、尿が減るといった全身症状が強く出ることもあり ます。
■消化器疾患を持つ人は悪化しやすい?
もともと胃炎・胃潰瘍・逆流性食道炎・過敏性腸症候群(IBS)といった消化器疾患を抱えている場合、ノロウイル スの影響で消化器疾患の症状が悪化する可能性もあります。
たとえば、逆流性食道炎のある人では嘔吐により 胃酸が食道に逆流し、食道粘膜を強く傷つける場合がございます。
また、感染性腸炎後症候群という言葉があ るように、過敏性腸症候群の方では炎症が持続することで腸内細菌叢の変化によって腸の知覚過敏や腸内運 動異常がおきます。
すると腹痛・下痢・便秘・膨満感などの症状が長引き、通常よりも腸の運動が不安定になる ことがあります。胃潰瘍や慢性胃炎がある場合は、嘔吐による腹圧の上昇が胃粘膜のダメージにつながり、痛 みや胃もたれが増すケースも少なくありません。
さらに、ノロウイルスが原因で、脱水や食事の摂れなさが続く と、体力低下によって全身状態が不安定になることもあるため注意が必要となります。
■ノロウイルスと間違えやすい症状
ノロウイルスと同じように嘔吐や下痢が現れる病気は数多くあります。
代表的なものには、細菌性腸炎、アニサ キスアレルギー、薬剤性胃腸炎、食中毒、また秋冬に流行するロタウイルスなどがあります。
嘔吐や下痢の症 状だけでは判断が難しいため、症状が強い、血便がある、高熱が続く、脱水症状が疑われるといった場合には 早めに医療機関を受診し、必要に応じて検査を受けることが大切です。
■家庭内で感染を広げないための対策
ノロウイルスは家庭内での二次感染がとても多い感染症です。
特に嘔吐物の処理は感染拡大に直結するため 丁寧な対応が必要となります。
処理の際には使い捨て手袋やマスクを着用し、消毒にはアルコールではなく次 亜塩素酸ナトリウム(いわゆる塩素系漂白剤)を使用することが推奨されています。
衣類やタオルにもウイルス が付着しやすいため、汚れたものは速やかに分けて洗濯するようにしましょう。
また、トイレやドアノブ、洗面台な ど、よく触れる場所はこまめに消毒することが感染対策として有効となります。
■発症したときの過ごし方とセルフケア
ノロウイルスに感染した場合、治療の中心は「脱水を防ぐこと」と「胃腸を休めること」になります。
嘔吐が止まら ないうちは無理に食べたり飲んだりせず、少しずつ水分補給を行うようにしましょう。
経口補水液は吸収が良く、 脱水を防ぐためにも適しているといわれています。
また、食事が再開できるようになったら、まずはおかゆ、うど ん、バナナ、りんごのすりおろしなど、消化の負担の少ない食品から始めるようにしましょう。
しかし、嘔吐や下痢が強い場合、脱水症状が疑われる場合、小さなお子様や高齢者の方は特に注意が必要と なります。
水分摂取がうまくできない、意識がもうろうとする、尿がほとんど出ていないといった兆候がある場合 には、迷わず医療機関を受診するようにしましょう。
■ノロウイルスと上手に付き合うために
ノロウイルスは誰でも感染する可能性があるウイルスですが、正しい対策を知っておくことで重症化や家庭内感 染を防ぐことができます。
特に胃腸が弱い方や持病がある方は、普段から規則正しい生活とバランスの良い食 事を心がけ、体調を整えておくことも大切となります。
嘔吐や下痢などの症状が出た場合には無理をせず、必要 に応じて消化器内科を受診し、適切なケアを受けるようにしましょう。
【まきこ胃と大腸の消化器・内視鏡クリニック】
船越 真木子(ふなこし まきこ)
2005年神戸大学医学部卒。基幹病院や京都大学医学部附属病院の勤務を経て、2021年に「まきこ胃と大腸の消化器・内視鏡クリニック」(京都市伏見区)を開院。がん罹患数の第一位である大腸がん、第三位である胃がんを早期発見するため、苦痛の少ない高精度な内視鏡検査を提供している。ミッションは『人生を最高に楽しめる体と心を支える』。総合内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医。
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